2010年3月17日水曜日

二元代表制

問い:二元代表制について思うところを述べよ

二元代表制とは、執政部の長と議会のメンバーがそれぞれ有権者に選ばれた正統な代表であることを基礎とする統治形態である。執政部の長が通常一名なのに対し、議会議員は多数存在する。そのため、執政部の長が、全地域的な代表であるのに対して、議員は各地域や各集団の代表であり、両者が代表する利益に差異が生じる。すなわち、二元代表制は、議員を通して多様な要求を吸い上げつつも、長が地域全体を代表することで、両者の間に抑制や協働が生まれ、より良く有権者の意思を活かそうとするものである。

二元代表制の例の一つとして、米国の大統領制が挙げられる。執政長官たる大統領と、各州や各選挙区ごとに選ばれる議員の二元代表が、それぞれ権力を分有しつつ、統治を行っているのである。しかし、二元代表制という言葉で語られることの多くは、日本の地方政府についてである。地方議会が、首長に対してあまりにも従属的で、議会独自の機能を発揮していないという二元代表制の実体への批判的な見方がその背景にある。そのため、議会基本条例の導入などの地方議会改革が行われたのである。

地方議会への批判は、議会のオール与党化体制などの議会と首長の党派性の一致が、議会の首長への監視機能を低下させているという見方を背景にしているように思われる。議会と首長は独立の機関であって、議院内閣制とは異なり与党も野党もなく、議会は首長の党派性と関係なく行動すべきだという主張がその背景にある。確かに、国政での与野党が、地方首長選挙で相乗りすることは珍しくない。さらに、首長側の提案を議会が修正したり否決したりすることも多くない。これらの事実は、一見すると、議会が首長に対して影響力を発揮していないという見方を支持するものである。

だが、議会のフォーマルな場で影響力を発揮していないからと言って二元代表の機能低下を指摘するのは、早合点である。首長が、選挙に出馬するときには、支持する政党と政策について協議することが考えられる。多くの政党と選挙での支持関係を結ぶことで、より広い民意を集約しているのである。これは、レイプハルトが提起した多極共存の合意型民主主義システムの変形と捉えることも出来うる。さらに、首長提出案が、提出前に議会の意見を組み入れていたり、議会による抵抗が予想されるものは提案されなかったりしている可能性がある。よって、議会が明示的に首長に抵抗していないからと言って二元代表制の機能不全を指摘するのは不適切である。
党派性というラベルが、有権者の選択コストを低下させるのであるから、むしろ議会議員は党派性を強調する事で部分的な政策的な民意を代表しやすくなる。二元代表の片方である議会で多様な利益を集約して、首長は議会との協調を行い、二元代表の過度な対立によって統治が滞ることを避け、効率的な運営を行っているという見方もありえる。

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