2010年3月14日日曜日

「日本の地方政治 二元代表制政府の政策選択」

曽我謙悟・待鳥聡史『日本の地方政治 二元代表制政府の政策選択』(名大出版会 07年)
レヴァイアサン(44号)」(09年4月刊)でこの本の座談会をやっていた。そこに4人の写真が載っていたのだが(著者2名、伊藤修一郎先生、司会?の増山幹高先生)、春に出た雑誌やのに、何でこんな服装なんだ?(確か半袖の先生も)と思ったと記憶している。春(4月15日)に出たんだから、まあ、座談会は冬(1月とか)だろうと勝手に想像したのだが、甘かった。最後に実施日が書かれていたが、それは前年の夏であったのだ。そういえば、毎号真っ先に読まれるという「編集後記」で、某先生が編集作業の愚痴を書かれていたが、研究者自身が雑誌の編集するというのは大変な苦労なんだろうな。他の書評とかの兼ね合いとか調整とかなんだかんだで、半年以上経って、満を持しての掲載だったのであろう(勝手な邪推。なお編集担当の先生が次の46号から変わるらしい。)。
それと、朝日とか日経(?)だったかでもこの本は取り上げられていた。朝日については小林良彰先生が書いたのがネット上にあったので、そちらを参照。
そういう周辺情報はここらで止めて、内容の話しに入りたい。二人の研究者の完全な共同研究によって書かれたこの本は、戦後日本の地方政治で、知事と議会(二元代表)の党派性や党派構成といった政治変数が政策に影響を与えてきたことを示している。まず、比較政治学のアプローチ(比較政治制度論)を使って理論モデルを検討し、日本の地方政治(都道府県レベル)を位置づけた上で多くの基本仮説や補正仮説を導いている。その上で、60年代から70年代前半を革新自治体隆盛期(4章)、70年代後半から80年代を保守回帰の政策変化(5章)、90年代からを無党派知事期の政策変化(6章)に分けている。4、5、6章では、それぞれの時代の特徴や背景の叙述をしたうえで、1章で検討された仮説を元に作業仮説を提示している。これらの作業仮説は、財政データをによって計量的に検討されたり、事例を使って検討されている。

小選挙区から選ばれる知事はマクロな集合財的な政策に関心を持ち、大選挙区から選ばれる議員にはミクロな個別財的な政策に関心を持つという分析があったが、4章にあった革新政党の議席が多いほど土木費や商工費や農水費が高まるいうのは意外だった。なぜなら、革新=福祉で保守のバラマキ政策とは一線を画していたと思っていたので。

理論的に仮説を導いて、その仮説を検証するという本書の研究スタイルはとても学術的(科学的?)だと思うし、こういう研究をぜひやってみたい。

最後に、とにかく良い本だと思ったが、6章では6個しか作業仮説がないのに作業仮説7が出て来て少し戸惑った。まあ、ただの誤植(番号が一つずれてる)だったのだが。

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